研究概要 |
本年度も昨年度に引続き糖脂質がどの様な機序で細胞機能の修飾を行うのかを分子レベルで明らかにするとともに, 細胞外から細胞内への情報伝達の調節機序の解明とその応用についても検討した. その結果, 本年度に予定していた目標をほぼ達成することができた. 以下にその研究成果を要約する. 1.ガングリオシド並びに合成含シアル酸化合物が様々な培養細胞に対してそれぞれどの様な作用を及ぼすか色々な角度から調べた. その結果, 腎由来の培養細胞(MDCK)に対して, GM3等がドーム形成能の昂進作用(水透過性の増大作用)を持つことを明らかにした. 2.昨年度に引続きマウス神経芽腫瘍細胞Neuro2aに対する合成シアル酸含有化合物による神経突起伸展作用の構造活性相関を調べた結果, 親水性基にはシアル酸を特異的に必要とするが, 疎水性基はそれほど特異性は高くはなくアルキルグリセロールエーテルやコレステロールで代替出来た. しかし, エストラジオール体置換では全く活性を示さなかった. 3.ヒト由来の神経芽腫瘍細胞GOTOの細胞表面に局在し, GQ1bにより特異的に活性が増大するタンパク質リン酸化活性(ecto-型)が存在することが明らかとなりこれに関連するリン酸化酵素をecto-Gg kinaseと命名した. この活性はGQ1bによる同細胞の神経突起伸展作用と関連があることが示唆された. 4.ガングリオシド依存性タンパクリン酸化酵素の部分精製法を改良し精製度を上げる方法を確立した. 今後は, ガングリオシド依存性タンパクリン酸化酵素(ecto-,endo-両型)を単一にまで精製し, さらに, ガングリオシド依存性タンパクリン酸化酵素系(酵素, 基質, 活性調節因子を含む)を再構成し細胞外から細胞内への情報伝達機構を解明し糖脂質の持つバイオシグナル機能を明らかにする必要がある.
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