研究概要 |
ミオシン分子は2つの頭部から成る. ミオシン双頭が互いに異なるのか同一なのかを決定し, ミオシン双頭構造の生理学的機能を解明するのが本研究の最終目的である. ミオシンを蛋白分解酵素で限定分解することによりミオシン頭部のみを切り出し調製する事が出来る. それをミオシンS1と呼ぶ. 高分離能ADP親和性カラム法により, ミオシンS1(A1)を2分画に分け, 各分画間の色々な性質を比較検討したが, 大差は無かった. その後の研究により, この2分画にはタンパク構造上の差が無く, この2分画はむしろ分画以前にS1が取残ている2つの状態に対応している事が判った(論文に印刷済み). 故殿村氏の研究によると, MgPPi中ではミオシン頭部の約半分がTNBSによって選択的に科学修飾される. これが, ミオシン双頭が"構造的"に不均一であることを示す強い証拠となっている. しかし, このTNBS反応ももしかしたらミオシン頭部の取る2つの状態に対応していたのかもしれない. そこで, TNBSによる"選択的"反応をより詳しく再解析することにした. そのために, まずこの化学修飾反応を精密に定量測定するためのシステムを作った(分光光度計で修飾反応を計測しそのデーターを直接電子計算機に送り込み, 化学修飾の度合とその速度常数を数値解析で求める). これにより精密解析のみならず, TNBSによるS1の化学修飾反応をより選択的・特異的に行なう為のより良い条件を精密に求めることも出来る. 現在行なっている予備実験によると, 以前の報告の様にMgPPi中でTNBSはS1の半分に選択的に反応する. この選択的反応がミオシンの蛋白構造上の不均一性に由来するのか, あるいはミオシンの2状態に由来するのかを近日中に決定する予定である.
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