研究概要 |
遺伝子の転写が,転写酵素RNAポリメラーゼの機能変換による転写対象遺伝子選択の変化に基因して調節されると考えた仮説を実証する目的の研究を展開し,以下の成果を得た. 1) 大腸菌遺伝子のプロモーター約100種のコレクションを作製し,正常に増殖した大腸菌より純化したRNAポリメラーゼホロ酵素(Eσ^<70>)によって,「試験管内混合転写」実験を行った. 転写水準の比較から,これらプロモーターの強度を決定し,順列を明らかにした. 2) プロモーター・コレクションを用いて,熱ショック時に誘導合成されるRNAポリメラーゼ(Eσ^<32>)のプロモーター選択能を解析し,プロモーターは,両酵素形態のいづれかでだけ認識され, 完全分化が成立していることを証明した. 3) RNAポリメラーゼ蛋白上で,プロモーター認識に関与する部位を同定する目的で,アミノ酸置換変異RNAポリメラーゼのコレクションを作製した. 変異RNAポリメラーゼの機能異常の分析から,βサブユニット上の機能地図を作成した. 4) 大腸菌の2種のシグマサブユニット(σ^<70>,σ^<32>)に共通して存在する14アミノ酸残基の合成ペプチドに対する抗体を作製した. この抗体に反応する大腸菌蛋白数種類を同定した. これらを単離し,その構造とRNAポリメラーゼ結合活性を調べた. 5) RNAポリメラーゼに特異的に相互作用を示す転写因子を多数同定した. そのひとつ,SSP(〓縮抑制蛋白)については,遺伝子を単離し,その構造と発現特性を明らかにした.
|