研究概要 |
PGI_2(プロスタサイクリン)制御因子は, (1)産生刺激因子(2)安定化因子(3)産生抑制因子の3つがあるが何れも構造は不明であった. しかしこの3つの因子は血栓性疾患の発症機序に密接に関与している臨床的データの蓄積が素手に存在している. 1.産生刺激因子:本因子は分子量1,000以下で耐熱性の酸性物質である. NMRによる研究から糖の一種である事は分かったが最終構造は決まっていない. 2.安定化因子:人血清50mlをアフィ=ティクロマトグラフィーであるブルーセファロースCL-6B, ゲル濾過であるセファクリルS-300で精製し最後に高速液体クロマトグラフィーGS-620Pによる精製で単一の蛋白質として精製された. SDS-PAGEで分子量は28,000であった. N末端アミノ酸の配列(32番目まで)はH2N-Asp-Glu-Pro-Pro-Gln-Ser-Pro-Trp-Asp-Arg-Val-Lys-Asp-Leu-Ala-Thy-Val-Tyr-Val-Asp-Val-Leu-Lys-Asp-Ser-Gly-Arg-Asp-Tyr-Val-Ser-Glnであった. この配列は〓アポAIのN末端アミノ酸配列と完全に一致した. C末アミノ酸, アミノ酸組成も一致した. 従って本因子はアポAIであると結論した. プロスタサイクリンの結合はHDLに特異的であり他のリポ蛋白であるLDL, VLDLには結合しなかった. 更に従来アルブミンがプロスタサイクリンに結合して安定化させるとの報告があったがこれはアルブミンに混入しているアポAIが結合していることが明らかになった. 3.産生抑制因子:本因子はやはりアフィ=ティークロマトにより60kの蛋白質として精製された.
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