研究概要 |
狭心症は心筋が一過性に酸素欠乏に陥ったために生ずるのであるが、これは心筋の酸素需要が増加するか又は酸素の供給が減少したために起こる。今回は冠動脈の一枝に病変を有する症例における狭心症の発生機序を検討した。 1.冠動脈に一枝病変を有する狭心症患者126例(男110名,女16名,年令33〜68,平均54.5緒)を対象として、(1)トレッドミル最大運動負荷試験をくり返し行い運動により発作が再現性をもって誘発されるか否か、(2)発作が運動により再現性をもって誘発される症例においてはβ遮断剤であるプロプラノロール80mg、Ca拮抗剤であるジルチアゼム90mg、ニフェジピン20mgを夫に別の日に投与して運動負荷を行い、これら薬剤の発作に対する効果および、(3)発作時に冠動脈造影法を行い発作中に冠動脈の攣縮が出現するか否かを調べた。 2.(1)発作はトレッドミル運動により126例中64例(50.8%)においては再現性をもっては誘発されなかった。(2)発作が再現性をもって誘発された症例においてはプロプラノロールは62例中52例(83.9%)において発作を抑制しなかった。これに反しジルチアゼムおよびニフェジピンは夫に77.4%および73.7%において発作を完全に抑制した。(3)62例において発作時に冠動脈造影法を施行し得たが61例において発作中に冠動脈の攣縮が出現し発作が消失すると共に攣縮も消失することが観察された。 3.以上の結果より一枝病変を有する症例における狭心症は労作によって生ずる心筋の酸素需要の増加が原因で発生する場合は少く、大部分は冠動脈の攣縮により心筋への酸素の供給が急激に減少して発生すると考えられる。したがって一枝病変例の狭心症の治療は冠動脈を拡張し冠動脈の攣縮を抑制するCa拮抗剤が中心となるべきであると考えられる。
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