インターフェロンに放射線防護活性のあることは、1974年度にTalas等が報告しており、インターフェロンの細胞増殖抑制活性、DNA合成抑制に基くとしている。また一方において、インターフェロンは細胞の放射線感受性に影響を及ぼさないとの報告もある。我々は1980年に、インターフェロンは、放射線照射の前に投与すると放射線防護活性を示し、放射線照射の後に投与すれば放射線効果が増強されると報告している。本研究計画において、上記報告を再確認すると共に、サルコーマ180細胞のIFNの各種活性に対する変異株-インターフェロンの抗ウイルス活性、細胞増殖抑制活性、DNA合成抑制活性に対する感受性の異なる細胞を用いて、インターフェロンの放射線防護活性は、これらの活性、特にDNA合成抑制活性とは全く別な、独立の活性であることを明らかにした。そして照射された細胞の線量効果曲線上で、放射線感受性の指標であるDoが減少し、照射前インターフェロン投与により細胞の放射線感受性が著明に低下し、PLD修復が増強されている結果が得られた。SLD修復の指標であるDqはインターフェロンによって殆んど変動しなかった。そこでDNA損傷が修復されるときに、修復酵素の一種であるエンドヌクレアーゼが若干増加するとの報告があり、エンドヌクレアーゼの測定を試みたが、実験成績にばらつきがあり、インターフェロン処理群にエンドヌクレアーゼが有意に増加している成績が得られなかった。またグレタチオンの細胞内定量をおこなったが同様の結果であった。PLD修復に2種類あり、通常考えられているPLD修復は遅延型であり、早期PLDにもインターフェロンが関与し得るか否かを検討したが、インターフェロンが早期PLD修復をEnhanceし得る傾向を認めたものゝ、確証し得る成績を得られなかった。これらの問題は、今後引き続き検討を要するものと考えられた。
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