研究概要 |
仏教の基本的概念および術語は々いうまでもなく、「ことば」によって表わされる。それを欧米(世界)のインド学者・仏教学者はいかに表現しているか。インド仏教全般に文献学と思想学との両者から通暁した著述は、英語によるものが見いだし難いため、ドイツ語にもとづき、万人が最高と認めるH.Oldenberg:Buddha,Sein Leben,Seine Lehre,Seine Geneinde(新版1961)と,H.v.Glasenapp:Die Religionen Indiens1943と,E.Frauwallner:Geschichte der indischen philosophie 1.Bd.1953;Diephilosophie des Buddhismus=phB1956とを選び、それらからErl【o!¨】sung,(erl【o!¨】sen),Heil,Erleuchtungの三語をつきとめた。Frauwallnerのph.B.に掲げられたN【a!~】g【a!~】rjuna:Madhyanakak【a!~】rik【a!~】(龍樹『女論』)の訳5章101偈について、サンスクリット-チベット語-ドイツ語訳にその一字索引を作成(Licte 1),それにより、Exl【o!¨】sung=moksa(解脱),Erleuchtung=bodhi(さとり)を確認した。moksaはCappelerの,Erl【o!¨】rung,erlosen,HeilはWahrigおよび国松孝二ほかの諸辞典の説明を示した。 本研究は比較思想的研究を目的としているので、上述のドイツ語が、M.Cuther訳の『聖書』(とくに新約聖書の四つの福音書=E)のどの個所に用いられるかを調査(Licte 2)して、上述のドイツ語のうち重要な語を選びEと対照し一つ論述した。 本研究のkey wordsである(1)bodhi=Erleuchtung(英語のenlightenment),(2)moksa=Erl【o!¨】sung,erl【o!¨】sen,Heilについて,Licte2によりそのドイツ語がEに登場する用例をすべて列挙し、その邦訳(口語訳,文語訳,前田護郎訳,共同訳,バルバロ訳)を合わせ示して、結論としては、おおむね(1)に関しては一応了解が得られるものの,(2)はかなり疑問の余地の多いことを、詳細に立証した。
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