研究概要 |
江戸時代絵画史研究は, 従来琳派や浮世絵, 文人画等民間の絵画傾向にのみ関心が偏り, 当時の実勢においては中心的な存在であった御用画派のそれに対して, きわめて冷淡なままに推移してきた. 本研究はそうした学界の一般的な研究動向を不満とし, 全国公私の諸機関および個人家に直接赴き調査・撮影して, 作品資料が有する諸データとその写真資料(35ミリカラースライド)を大量に収集した. フィールド・ノートに記録した作品データは, 独自に設計した構造に従ってパーソナルコンピューターに入力し, 江戸時代御用画派を中核とする日本近世絵画作品のデータベースを作成した. 目下, 情報量は遂次累積されつつあるが, それに従い, 作家名, 流派名, 作品名, 時代, 員数, 材質, 落款, 印章, 所蔵者, 所蔵番号, 寸法, 評価等のさまざまな属性とその組合せにより, 検索し, 整理し, 並べ換え, 特定の範囲で抽出するなど, 多様な目的と用途で収集資料を活用することが可能となった. 本研究は, 江戸時代絵画史研究の空隙を埋める目的の下に始められたものであり, 時代全体の絵画状況を確めるにも, 御用画派と平行して民間在野の絵画流派の作品も調査の対象としてきた. それらをも合わせて, 大量にして良質な管理された作品データと写真ファイルとを多様に照合させ, 江戸時代絵画の構造とその史的展開を新たな視点から切り開く基盤を構築するに至った. なお, 主な調査対象の機関・社寺・個人家は下記の通り. 東京-東京国立博物館・出光美術館・大倉集古館・壷中居・平山堂ほか 京都-京都国立博物館・京都市立芸術大学・柳家・水谷家ほか 仙台-仙台市立博物館・東北大学附属図書館 福岡-福岡県立博物館・福岡県立美術館 米国-フリア美術館・メトロポリタン美術館ほか
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