研究課題
一般研究(B)
昭和60・61年の2年間において調査した個所は黒川古文化研究所をはじめ、大阪市立美術館・長崎市立美術館、そして京都・長崎・東京在住のコレクターなどであるが、とくに黒川古文化研究所と大阪市立美術館の二ケ所は本研究にあって、その中核となる重要な調査対象であった。黒川古文化研究所は、筆・墨・硯・紙のいわゆる文房四宝だけでなく、文房具に関連する、ありとあらゆる作品を、ほぼ完全に具備している世界でもめずらしいところであり、その数も、じつに450件におよんでいる。中国の文房具類を、これほど数多く収蔵しているところは、少くとも日本においては、おそらく、ここ以外外にはないのではないかと思うが、この研究所が、これからのこうした分野における中心的な存在になることは間違いないところであり、ここでひとつの基礎づくりをしたことは、われわれの今後の研究に大きな意味をもつことになるのではないかと思う。大阪市立美術館は、日本でも、きわめて稀な犀角杯を数多くもっているところとしてよく知られているところである。ここに収蔵される54点の犀角杯は、いずれも清時代のものであるが、作風にヴァライエティがみられ、清時代の犀角杯を研究する上には、なかなか重視されるものである。そもそも、本研究の目的は、文房四宝を中心とした文房諸器具を広く調査し、それらの資料収集をおこない、これら文房具類と中国・文人たちの芸術活動とのかかわりを、何らかの形で捉えてみたいというものである。この2年間では、美術館や収集家での調査と写真撮影をおこない、モノクロ写真2200枚、カラースライド2200枚という尨大な写真資料を収集した。このほか文献資料の収集も併行しておこなっており、着実にその基礎固めが進んでおり、今後の研究に明るい希望を抱かせる状況にあるといってよい。