研究課題
一般研究(B)
本研究は以下にのべる2つの部分からなる。第1部は、過疎地域における地域振興と社会福祉の関連を、道北地域における地域経済・住民生活の動向と社会福祉行政とりわけ社会福祉施設の展開を基軸にして解明している。ここで得られた知見は、(1)過疎化が単に人口の減少を意味するだけではなく、老人・障害者・単親家族などいわゆる福祉対象を堆積させる形で進行しており、地域の福祉ニードを増大させていること(2)社会福祉施設の設置が補助金導入による地域経済とりわけ建設業界の活性化をともないつつ、施設そのものの雇用創出効果、購買力の拡大など、文字通り地域経済振興の一環として位置づけられていること、(3)しかしながら補助金に依存しながらすゝめられたこうした地域福祉計画のあり方は、国の福祉政策の影響を直接に受けるため、福祉政策の改善が地域福祉構想の前提であること等々である。第2部は、過疎地域で一般化している「一人暮し老人」の生活と意識に関する実態調査をつうじて、地域福祉のあり方を検討している。(1)一人暮し老人は労働者家族にあってはライフ・サイクル上起りうる形態であるが、農民層を中心とする自営業層にあっては特殊な経過をたどって起る場合が多く、過疎地域の一人暮し老人といっても一様ではなく出身階層によってその生活と意識に差異が認められること、(2)彼らが必要とする社会福祉は、在来のいわば「こま切れ」の地域福祉ではなく、「総合的・包括的な」地域福祉であること、(3)健康に対する保障と地域交流の確保を軸とした地域福祉であることが重要であり、具体的には公的な責任における社会福祉施設を核とした地域福祉計画の展開が期待されていること等々である。
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