研究概要 |
我々はいずれかの土地に住みついて生活を展開する. 各自の職場で仕事をし, 家族のもとに帰って寛く. そしてその職業に応じた地域社会を形成する. そうした地域社会には解決すべき地域問題が生じたり, 達成せんとする課題が掲げられたりする. 都市社会にせよ村落社会にせよ, 生活のために現状を革新ないし保守しうとする計画が, 市町村自治体をはじめ種々の集団, 組織から打ち出される. 我々はいずれかの地方都市において, こうした地域社会にかかわる諸計画に注目し, その計画の立案-実現過程を, その都市の社会構造と, またその都市の歴史的経過のなかで解明し, 各計画の持つ意味を理解したいと考えた. すなわち, (1)どのような地域社会計画が, 誰によって, いつ, なぜ, 企画され, そしてその計画の実現あるいは阻止のためにどのような努力が払われたか, (2)それらの立案-実現(不実現)過程を通して, 住民の自治の程度がどう高められたかを探ることである. 具体的調査地として, 我々は帯広市, 三条市, 諫早市を選定した. そしてすぐさまこれら3都市を比較することを慎み, 一方ではその都市を全体的に捉えるようにし, また周辺市町村との関連にも注意しつつ, 提起された諸計画をできるだけ拾い上げ, その一部についてより詳しい資料を集めた. たとえば, 諫早市おいては諫早湾を大規模に干拓しようという計画を, 帯広市では総合計画と商店街組合の諸計画を, 諫早, 帯広の先進農家を通して考えられる地域農業計画を検討した. 我々はこれまである程度の成果を挙げ得たが, しかしまだ解明すべき事柄が数多く残っており, 引き続き現地調査に赴き, データを増やしている. 上記3都市を真に比較するにはさらに数年を要する. 本報告書ではこれまでの成果のごく一端を提示したにすぎない.
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