研究概要 |
1.保育所に在園する障害乳幼児の発達過程 保育所で保育されている障害をもつ乳幼児の発達過程の検査ならびに観察による把握を定期的に実施した. 就学年齢に達したケースについて発達経過のまとめを順次おこなった. ダウン症, 脳性マヒ, 運動性協調障害と聴覚障害, 麻疹後脳炎後遺症による重度発達遅滞, 自閉的傾向をもつ発達遅滞, 軽度発達遅滞等8事例について詳細な発達過程と保育所の日常生活における変化をとらえ, 分析した. また, 点頭てんかんによる重度発達遅滞, 自閉傾向および口蓋裂(発達遅滞をともなう)事例について中間報告をまとめた. 個別の障害による発達経過のパターンを明らかにするとともに, 発達の質的転換期と保育の方法・内容・条件とのかかわりを仮説的に指摘した. 2.保育所の保育内容と障害乳幼児の発達 研究対象となった2ヵ園の設置経過および障害児保育実施の歴史的経過, 国や自治体の制度との関係を調査した. また, 両園の保育方針, 保育目標, 保育内容のうちに, 障害児保育を有効に実施しうるための条件を探った. ケース・スタディとして, ダウン症の1事例のクラス日誌を分析し, 障害児と保育者との関係, 健常児との関係, クラスの活動課題への適応など, 保育所における障害児保育に不可避となる, クラス運営と保育内容の諸問題を分析した. また, 自閉的傾向児の集団参加に一対一の治療関係をとりいれた事例をもとに, 子ども-子ども関係, おとな-子ども関係の意義を分析した. 3.障害児保育にかんする文献的研究 障害児保育をめぐる, わが国の研究状況を, 日本保育学会, 日本特殊教育学会を中心に, 主としてその研究発表内容から分析した. また, わが国の1970年代以降を中心に, 障害児の発達と保育をめぐる図書についてリストを作成した.
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