研究概要 |
本研究は南西諸島(沖縄,奄美)における家族の構造的特質とその変容を、南西諸島の各地域の家族の比較研究を通じて実証的に明らかにすることを目的とする。昭和61年度は昨年度にひきつづいて、文献の収集,現地調査,研究会を中心として研究を実施した。 まず文献の収集においては、今年度は奄美地域の家族に関連する文献の収集を中心に行った。今年度収集した文献は約250件に達した。 昭和61年度の現地調査は昨年に引きつづいて八重山地域で実施するとともに新たに沖縄本島の二ケ所で調査を行った。八重山地域の調査は竹富町波照間島北地区(約45戸)を対象とした先祖祭祀と家族の調査であって、今年度の調査で全戸調査を完了した。その結果明らかになったことは、波照間の家族が直系型家族の構造を基本的にもちながらも、極めて「個人主義的特質」が濃厚に認められることである。このことはとくにオガンとよばられ祭祀対象との関わり方によくあらわれている。すなわち夫と妻とでは異なるオガンに関わる例が極めて多いのである。本島での調査地区のひとつは東部の奥武島であり、ここでは漁業を中心とした生業システムと家族の関連をテーマとして調査を実施した。いまひとつは中部の宣野湾地域であり、ここではユタと呼ばれるシャーマンとクライアント及びその家族との関連をテーマとして調査を実施した。 研究会は今年度、計5回開催して調査結果を報告と討議を行った。 本研究では過去2年間の研究成果を報告書作成に向けて集約するために、来年度は補充調査と調査結果の整理を行う予定である。
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