研究概要 |
長谷川は、「日本人のソ連観の変遷」と題する論文を日本語・英語で執筆し、ハワイ東西センター(4月),スラブ研究センター(7月)で発表し、内外の専門家からのコメントを受けた。これまでのところ(1)戦後の一時期(中国における文化大革命期)を除き、ソ連が日本人間において「最も嫌いな国」の筆頭に上げられている。(2)特に顕著となるのは、MIG25事件,200カイリ漁業交渉,大韓航空事件等の直後である。他方、(3)ソ連人間における日本観は、必ずしも悪くないことを指摘している。長谷川の研究は、日ソ二国間に焦点を絞っているのに対し、木村の研究は、日ソ相互イメージの変遷をグローバルないし北東アジアというより大きなコンテキストで捉えようとしている。即ち、1955-56の「雪どけ」,1960年代末〜70年代初めの米中接近,1979年のアフガニスタン事件後のデタントの崩壊などによって日ソ相互イメージがどのような影響を蒙ったかを考察している。また、宇多は、札幌(1回),東京(7回)で長谷川・木村と研究会を行い中ソ接近の視点から本題にアプローチしている。長谷川の研究は、"Japanese Perception ofthe Soviet Union:1960-1985",Acta Slavica Iaponica(5号,昭62)、木村の研究は、「日ソ交渉-古くて新しい問題-」(昭61年4月号)に中間報告の形で発表されている。また、宇多は、最終年度に研究発表する予定である。長谷川と木村のアプローチは互に予盾するものではなく相互に補完し合うものであるが、最終年度においては、両者の整合性ある統合が課題とされる。もう一つの課題は、日本人の反ソ感情とソ連人間の親日感情が生ずる理由の探求である。これは、昭和62年5月,6月に引き続き二度にわたり木村が訪ソし、ソ連科学アカデミー付属世界経済国際研究所と合同セミナーを行う予定であり、日ソ共同世論調査の提案を受けていることから将来よりつっこんだ研究が可能となろう。
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