研究概要 |
社会的集団によって異なる経済的利益は政治過程において, どのように自己主張されるのであろうか. 日本では, 経済問題を含め, 政策決定過程における官僚が果たす役割のウエイトが高いといわれてきたが, 近年, 官僚制の影響力の衰退と政治家の影響力の増大がいわれている. とりわけ, 政権政党である自民党の政務調査会の部会, 調査会などで, 政治家を通じた社会集団の政治的主張が顕著になりつつあるといわれている. 本研究は過去20年間の自民党国会議員の特徴, 属性, 役職経験のどを政策決定過程における政治家の役割との関連において捉え, それらを体系的に明らかにすることを通じて, どのうように経済的利益が政治家を通じて政治的に表現されるか, その資源は何であるのか, 官僚制から政治家への影響力の変化は何故起きたのかを実証的に明らかにしようとしたものである. 自民党議員と政策決定に関する実証分析を通じて浮き彫りにされた事実は, 第一に自民党が30年以上にわたる一党優位体制の下で, その組織が制度化することを通じ, 「族議員」と呼ばれる議員集団が政治家に有利に寄与しているということである. 第二には, 政策決定過程への政治家の関与のあり方が従来「番犬型」であったのに対し, 今日では両者が互いに対立し, 緊張したものにさせる「猟犬型」の度合が高まっていることである. 第三はこのような政治家の政策決定への関与が選挙での再選を最も大きな要因になっている. そこで, われわれは引続き, 官僚制の側に焦点を当て, 官僚制の自己主張のあり方の分析, 政治家の側の問題などを探求と分析を続けることによって, 日本の政治システムの全体像を明らかにする必要がある. その意味で本研究はこのような壮大なプロジェクトの第一歩を印したものであるということができるであろう.
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