研究概要 |
一九七〇年代以降に盛んとなった, 明治政府の社寺支配, 統制の研究は神祇官・神祇省, 教部省等のイデオロギー的側面の分析に偏より, 大蔵省や民部省等による土地財政政策や身分の再編といった済的・政治的側面の分折が手薄であった. こうした研究史を踏まえて, 本研究は以下のことを明らかにした. 1.まず(1)近世に於ける離宮八幡宮の社領(大山崎荘・高九百石)経営の実体を明らかにした. とくに複雑な土地所有の実体を明らかにし, その中でも「五分」といわれる土地所有の形態を初めて明らかにし得た. さらに, (2)近世における大山崎荘の支配身分・領主的存在であった社家層の中から正田家をとりだし, その経営帳簿の分析をもとに, 社家の経営の実体を明らかにした. 2.以上の近世における離宮八幡宮の経営の実体を踏まえた上で, 明治政府の社寺支配, 統制の過程を主に経済的側面から明らかにした. まず(1)大蔵省・内務省の地租改正事務局の社寺地処分の過程を分析することによって, 神宮・僧侶の経済的基礎の変化を明らかにし, さらに(2)旧社領内における社家・僧侶を含め, 農商民層の新たな階層分化の変化を土地所有の側面から明らかにした. 3.また, 以上の経済的側面の分析に加えて, 社家身分の近代における士・氏への再編過程を明らかにした.
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