研究概要 |
本研究は, 地域公共財の私的評価と社会的評価の乖離と合致を取り扱ってきた従来の理論的・実証的研究の成果をとりわけ外部性アプローチ, 社会的貴用論および社会的評価論に注目して摂取し, (1)地域公共財の社会的評価の方法とシステムの確立, (2)社会的評価を確定するための費用の計算原理, (3)こうした費用の公正な分担のシステムを開発し, 地方財政研究の新しい局面をきりひらくことを目的としている. 地域公共財の社会的評価に関する従来の理論の比較研究を米, 英, 独, 日を中心とした文献の収集と, 各国における費用負担の諸原則を比較検討しつつ行った結果, 従来の地方財政研究においては, 財政支出の効果を特定の目的に限定して考察することはあっても, 地域公共財による地域共同体アメニティの総合的な向上・保全をかかわらせて論ずるという視点が欠落していることが明らかになった. この点をふまえてた上で, 地域公共財に関する費用負担のあり方を全体としてシステム化することの必要性が確認された. 以上の理論的検討と課題の整理をふまえて, 都市アメニティと地域公共財の整備との関連を統計的に明らかにするための基礎作業として諸外国を含む基本的文献の収集と社会資本整備とその維持管理に関する統計を中心に各種関連統計の収集を行った. さらに, それらの統計データをふまえつつ地方公共団体の財政分析を予備的かつ個別的地域の事例ではあるが行った. 各地方公共団体にとって, 都市と農村におけるアメニティの社会的評価と環境水準の上昇は重要な課題となっている. 同時に, 近年の地方財政の赤字の累積によって, アメニティの極大化と, 資源の最適配分に対する要請は, ますます緊急性をもつに至っており, 情報技術の発展をふまえて, 地域公共財の社会的評価を確定するための費用計算を可能にするための環境情報システムのあり方が検討された.
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