上越市中ノ俣の民家・集落と生活慣習に関する調査を行った結果、判明した主な点は以下の通りである。 1.中ノ俣の民家について 中ノ俣の民家について、悉皆調査を目指して調査を進め、80棟ほどのうち62棟の調査を行った。調査の結果、中ノ俣の民家は、チャノマを中心にザシキ・ネマ・ナカマ・ニワ(土間)を配するほぼ共通する平面を持つこと、「指付の使用場所」「構造柱の省略の有無」「ネマの奥行」などを指標に編年を行うことが可能であること、編年の結果宝暦期(18世紀中期)ごろまで遡る民家のあること等が判明した。 2.家替(えがえ)について 家替は集落内の2戸が互いに家を交換することで、6件(12棟)の存在を確認した。建物だけでなく屋敷地・屋敷林とともに交換し、大きな家を手に入れた者が相手に金額に換算した差額を払う。家替は全国的にも、また歴史的にも珍らしい慣習だと考えられる。 3.近隣集落との比較 中ノ俣に見られる民家平面の地域的な広がりについても検討を行った。中ノ俣の西の谷に当る桑取谷・能生谷の民家は平面・構造等中ノ俣の民家とほぼ共通している。しかし、桑取谷を流れる桑取川の川口の集落有間川の民家は中ノ俣や桑取谷の民家との共通点はない。街道沿いの集落であることに起因するものと考えられる。 4.文献資料について 気比神社・山田豊司家・牛木信一郎家等の分献資料を収集し分析した。襖・屏風を購入するための屏風唐紙講の存在、集落内の普請の様相等が判明した。
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