研究概要 |
農地信託は資本主義・社会主義を問わず,農地の所有と利用が分離する局面における土地利用システムとして考慮に値するものとなってきている. 1.中国農業では生産請負制の展開にともない,専業戸と兼業戸への階層分化が進んできている. その中で最近注目されるひとつの新しい動きである「転包」は集団的土地所有の下での個別農家による土地利用の一層進化した形態である. そこでは「又貸し」的な性格ゆえに,請負地に対して第2所有権的性格が付与されつつあり,新たな地代授受関係が形成されている. 他分で専業戸が生み出されず,一路総兼業化に向かう地域では,兼業深化にともなって耕作放棄地が発生しており,土地利用関係を調整するシステムの必要性が増大している. 2.ソ連のズヴェノーシステムはこれと比べると機械や農地利用が特定のグループや個人に委ねられているとはいえ,集団経営全体の作付部画や分解配分計画の中に組みこまれており,経済計算制が適用されてはいるものの,ズヴェノーが自立的生産単位かどうかは予断を許さないところである. しかし,すでに土地用益権の保有単位としての集団経営・現実的な土地利用の単位が限定された期間や耕地ではあれ,分離しはじめていることには変わりがなく,集団経営が土地利用関係の調整機能を担っているとも考えられる.
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