研究概要 |
農地信託は農地の所有と利用が分離する局面における土地利用システムとして, 資本主義世界のみならず社会主義世界でも考慮に値するものとなってきている. アメリカではすでに農地運用サービス会社が企業として成立し, 受託農地の運用にとどまらず, 農業コンサルタント事業に至る広範な農業関連サービスを行ない, 農民層分解の進行に伴なう零細農業の大量の出現と, 他方での著しい農業技術革新に応じた技術と経済のアンバランスを調整する中間組織体の機能を担っている. フランスでも農業土地集団GFAが近年展開しつつあるが, これまでのところ家族型が中心をしめるとはいえ, 共済型や投資(信託)型といった, アメリカの農地運用サービス会社と機能面での共通性をもった中間組織体の役割が注目されている. 会社システムや土地所有制度が異なるとはいえ, ソ連のズヴェノー・システムや中国の個人請負農業や「転色」は旧来の集団農地の下における農地信託システムのひとつのバリエーションと見ることもできる. こうした諸外国の新しい動きに照らしてみるとき, 日本でも進行している農地流動化を信託の視点から把えかえすと, 中間組織体としての農協の役割の重要性が浮かび上がってくる. 農地法・農協法の現行の法的粋組の中でだけ農地信託を考えるのではなく, 新しい農用地利用システムの確立の視点かから農地信託的発送と手法が再考されてしかるべきものと思われる. そうした試みは我が国でもすでに実施に移されている. これらの動きをトレースし, 今後の農改に反映させていくことが切に求められているといえよう.
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