本研究の目的は、日本人と外国人の利き手と音楽能力についての知見を得ることである。日本人の音楽専攻群については既報告のとおりであるが、その後音楽専攻群と非音楽専攻群の比較検討を実施し、その概要はつぎのとおりである。 1.メロディ記憶テストにおいては、音楽専攻群、非音楽専攻群ともに左利きが右利きより多くのメロディを記憶し、右半球優位であった。 2.歌詞つきメロディ記憶テストでは音楽専攻群、非音楽専攻群ともに「言語情報優位の原則」により右脳から左脳への半球優位の逆転現象がみられた。 3.音高(ピッチ)を識別するテストでは、音楽専攻群の左利きは全体誤反応平均率9%、非音楽専攻群23%と差はあるが、右利きと比較して音楽専攻群では+3%、非音楽専攻群では+2%と全体誤反応平均率が高くなり利き手の質的な差が存在することが明確になった。 4.リズム型識別テストでは、非音楽専攻群では半球優位性はみられなかった。これはVrtunSKI(1977)の研究結果と一致している。 5.音色識別テストでは、音楽専攻群、非音楽専攻群ともに左利きが右利きより、わずかに優れていることも分った。 6.音楽の情動想起時の音楽専攻群と非音楽専攻群の左利き、右利き別脳波の半球機能差についても、左利き、右利きともに右半球の波型が左半球に比べて有意に大きな結果を得ているが、目下更に資料を整理分析中である。 7.日本人と外国人との比較のため、上述1から6までの各種テストを、アメリカ・テンプル大学(フィアデルフィア)、ニューヨーク州立大学で音楽専攻群、非音楽専攻群に対し実施したが、分析過程で再調査が必要となり昭和62年2月〜3月に再調査を実施した。このため再度資料分析を続行中で本年9月末研究報告をまとめたい。
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