研究概要 |
昭和60年12月にリングダイレーザーが設置され、直ちにエルビューム(Er)アイソトープについて超微細相互作用定数(【^(197)Er】)及び偶核のアイソトープシフトを測定することを行なった。これはレーザーシステムの性能評価も兼ねて行なったもので、エルビュームのナチュラルアイソトープに関するアイソトープシフトを582.7nmの遷移について観測し、平均二乗核半径の変化を得た。又【^(197)Er】の超微細相互作用定数を決定し、アイソトープシフトの値から、他の近傍核の場合と同様にアイソトープシフトに偶奇核依存性があることを見い出した。これらの結果は希土類核の核半径に関する新しい情報を与えるものである。この結果はPhys,Rev誌に掲載される。 次に【^(211m)P_o】アイソマーの生成を(α,n)反応を用いて行ない、生成率,〓α粒子のエネルギー分布などを調べた。又レーザー励起に適当であると考えられる【^3P_1】状態(準位16831【cm^(-1)】)について、その吸収断面積を調べた。レーザー励起の波長は適当であるが、断面積はしかし非常に小さく、【P_o】アイソマーの核偏極生成には不適当な準位であることが判明した。さらに、スピン交換反応による核偏極生成を【R_o】と相互作用させて達成することを現在試みつつある。 昭和61年度では、立方晶系のSr【F_2】中に含まれた【^(170)Tm】アイソトープをレーザー光ポンピングにより核偏極させることを行なった。この方法は微量の原子を偏極させ、核構造の情報を得るのに有効である。結晶を液体ヘリウム中で冷却し、〜590nmのレーザー光を円偏光の状態で吸収させる。磁場は100〜300Oe程度である。核偏極及び核整列を観測するのは、【^(170)Tm】(I=【1^-】,128日の半減期)が崩壊して放出されるβ線及びγ線を検出することにより行なった。その結果約4%の核整列、8±4%の核偏極が観測され、この方法が核構造研究に有効である事が判った。
|