研究概要 |
大阪大学核物理研究センターで建設が予定されているリングサイクロトロン・カスケード計画は、現在稼動中のAVFサイクロトロンで加速したビームを、新たに建設されるリングサイクロトロンで更に加速して、陽子やα粒子を最高400MeVまで加速する。加速ビームのエネルギー幅や時間幅の短い良質のビームを得るため、リングサイクロトロンをフラットトップ加速(ビームの位相に対応して加速電圧が変化するのを緩和する)の技術を取入れる他、入射ビームのエネルギーや位相を制限するビーム成形処理装置を、入射ビームの輸送系に設置する。 本研究では、入射ビームの位相幅を圧縮して、ビームの時間幅の短い良質のビーム成形を行なうためのビームバンチヤーの開発研究を行なった。ビーム輸送の軌道計算により、バンチヤーの設置場所,仕様,得られるビームの質などを予測した。バンチヤーは、πモードのドリフトチューブをもつ可変周波数の共振器で、90〜130MHzの1/4λ型のものを設計し、等倍大の原型を製作した。ドリフトチューブの外箱は、50cmのほゞ立方体のものをアルミニウムの厚板の溶接構造で作り、ドリフトチューブと共軸空胴は電気銅で製作し、電気的静特性を測定した。一方この共振器を励振するためこの周波数範囲の同調型電力増幅器(出力8KW)を製作し、これとバンチヤーを電力給電線を介して結合し、105MHz近傍でドリフトチューブを130kV程度まで励振した。実機としては、最高150kV程度の励振を目指しているが、これは電源と冷却を強化することにより達成できる技術的な目途はついた。今後、電圧や位相の安定化のためのフィードバック回路や、遠隔操作等のための改良、開発が課題として残っているが、これまでのAVFサイクロトロンで開発してきた技術で解決が可能である。」
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