研究概要 |
アルカリハライドなどのイオン結晶の内殻吸収のthreshold付近には内殻励起子が観測され、また希土類およびその化合物の軟X線スペクトルでは放射ピークが吸収ピークと等しいエネルギー位置に現われる。いわゆる共鳴放射が観測される。本研究では、これらの現象に関与する内殻励起状態の生成および減衰の機構を光電子スペクトル,軟X線放射,吸収スペクトルより明らかにすることを目的とする。本年度に得られた結果を以下に要約する。 1.Naハライドについて、Na2p準位の励起エネルギー領域でシンクロトロン放射を利用し、価電子帯光電子スペクトル,オージェ電子スペクトルの励起光依存性を調べた結果、Na2p内殻励起子エネルギー付近の励起光で強度増大(NaFはオージェ電子の強度増大のみ)が認められた。これより励起子の非輻射減衰過程として、【L_(2,3)】(exciton)-V,【L_(2,3)】(exciton)-VV過程が存在し、特に【L_(2,3)】(exciton)-VV過程が強く起ることが判明した。また、これらの過程の減衰確率等の考察から、表面励起子の影響も考虜する必要のあることが推察された。 2.希土類化合物のいくつかについて希土類【N_(4,5)】放射,吸収スペクトルを測定した。吸収スペクトルは、4【d^9】4【f^(n+1)】終状態の多重項構造を大概反映することがわかった。価数揺動物質と考えられているSm【B_6】の吸収スペクトルは【Sm^(3+)】イオンとして説明される構造を顕著に示した。これは【Sm^(2+)】イオンの吸収構造がそのthresholdより高いエネルギー領域に現われるため、自動イオン化により不明瞭になったと考えられる。また、La【B_6】およびCe【B_6】の【N_(4,5)】放射スペクトルに共鳴放射(4【d^9】4【f^(n+1)】→4【d^(10)】4【f^n】)を始めて見い出した。 3.金属Laについて、電子励起【M_(4,5)】放射スペクトルおよび比較的高いエネルギーの軟X線の照射による蛍光励起【M_(4,5)】放射スペクトルの測定結果から、内殻3d空孔の出現により、伝導帯から空の4f準位への電子の移動(shakedown process)が起っていることが判明した。
|