研究概要 |
有機液体分子の反磁性帯磁率異方性を大阪大学超強磁場実験施設のパルス強磁場を閉いて測定し、液体分子間相互作用に関する情報を得た。反磁性帯磁率は非常に小さく測定困難であるが、磁場の2乗に比例するため、パルス超強磁場とコットン・ムートン効果を利用し、さらに本科研費で購入した広帯域パルス増幅器等の測定器を組合せることにより感度とS/Nの向上をはかることができる。 理論的解析の結果、磁気複屈折と反磁性帯磁率は1対1の対応を示し、その温度依存性は言わゆるキュリー・ワイス則に従うことが判った。このキュリー・ワイス温度は液体分子間に働く四重極相互作用の大きさを反映する量である。 17種類の有機液体とその混合液を用いて測定した結果ごく一般的に液体の反磁性帯磁率にはキュリー・ワイス則が適用でき、分子間相互作用の情報が得られた。例えば、ベンゼン,クロルベンゼン,ニトロベンゼンのキュリー・ワイス定数はそれぞれ 0,145,165Kであり、この順に相互作用が強くなっている。 混合液を用いた実験では、異種分子間の相互作用が求められることが、理論的、実験的に明らかにされた。例えばベンゼン-ニトロベンゼン間には160Kもの強い相互作用が働いている。 一方異方性のほとんどない四塩化炭素とベンゼンとの混合液では相互作用が0となる理論解析結果とは大きく異なる実験結果が得られた。即ちわずか10%の四塩化炭素を混入することでキュリー・ワイス定数が0→150Kにも上昇する。このことは混合液中にクラスターが形成されると考えることにより説明される。このように分子配向による反磁性帯磁率の測定は液体の構造の情報まで与えてくれるものである。
|