研究概要 |
本研究の目的は、渦運動による音の放射を実験および理論の両面から明らかにすることにある。昨年度の科研費で設置した実験設備をもとに、本年度は放射音の実験データの実測に着手し、目的とする信号の同定に成功した。 昨年度設置した無響室は、外部からの雑音の遮音性,室内発生音の無反射性等の実験環境にすぐれていることが、すでにデータで示されている。そのような室内に、高圧ガスのパルスを噴射して渦輪を発生させ、渦輪の運動径路上に設置した円柱に衝突させ、その運動の過程で発生する音波の測定を行なった。測定には、音の遠方場に相当する位置に高性能のマイクロフォンを3台設置して音波の検出を行なった。検出した信号は、パルス信号の記憶装置であるウェーブメモリにインプットされる。ここで使用したマイクロフォン1台とウェーブメモリ1台は本科研費で購入したもので、本年度の実験測定の心臓部をなすものである。円柱の周囲20°毎に全部で18の点で音波を受信して、音の放射の角度依存性を知るためのデータを得た。検出した音の波形には三つの大きなシグナルがあるが、がわかり、その1つが本研究で目的とする渦運動によって励起された音の信号であることが確かめられた。他の二つの信号の由来も同定することができた。 理論的解析は、実験とは独立にすすめられている。2次元乱流の数値シミュレーション(神部),渦輪・物体の相互作用による音の放射(宮崎・神部),渦運動の解析(橋本),渦糸の運動(木村)など、現在解析が進行中であり、また発表されつつある。
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