研究概要 |
世界最初の海洋衛星SEASAT-1は、1978年にNASAによって打ち上げられ、マイクロ波の各種センサ、例えば高度計や散乱計等によって従来の観測ではみられなかった画期的な海洋情報をもたらした。本研究計画の中のマイクロ波高度計と散乱計の解析アルゴリズムの開発とその海洋力学への応用研究の成果は以下の通りである。海洋における海流の95%は、地衡流平衡によると考えられる。この海流は、マイクロ波高度計により海面トポグラフィを測定し、地衡流計算により求められる。しかし、アルティメトリ資料の中には、地衡流に相当する成分以外に、ジオイド,潮汐,軌道の不確かさから生ずる誤差、高度測定そのものを不正確にする水蒸気量など様々な成分が含まれており、それらをいかに補正,除去してやるかがアルティメトリを用いた地衡流の測定での重要なポイントとなる。特にジオイドに関してはGEM-IOや我奴古のジオ ドモデル等を用いて補正されてきたが、現在の段階ではジオイドは地衡流測定に必要な精度では求められていない。そこで本研究では、GEOS-3衛星及びSEASAT-1衛星を用い、(1)空間フィルタを用い軌道のバイアス,トレンド及びジオイドの影響を小さくする方法 (2)軌道の交点でのアルティメトリの差を用いる方法を検討した。一方、マイクロ波散乱計に関しては、海面におけるマイクロ波の反射過程を電磁波の境界値問題として数値計算をし明らかにした。特に、散乱係数の入射角依存性,散乱係数の風速依存性並びに誘電率による依存性について検討した。この他、海水の水温と塩分による依存性についても計算してみたが、これらによるマイクロ波の反射に関する散乱係数には、大きな依存性はみられなかった。以上の開発された解析アルゴリズムと検討結果は、1980年代後半以降のERSの散乱計やTOPEXの高度計の資料の解析に役立つと期待される。
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