研究概要 |
1.男鹿半島下部グリンタフ・門前層群を検討し、次の結果を得た。 (1)feeder dyke,粗粒降下堆積物,溶岩流の構造などから、火山源岩類の流動方向,噴出中心を求めた。加茂溶岩類の噴出中心の多くは、西海岸に沿う地域に集中し、溶岩流は30゜前後の古斜面を西流した。しかし、潜岩溶岩類の玄武岩溶岩流は、ほぼ西方に位置した噴出中心から東へ流下したものである。また、潮瀬の岬砂礫岩は南方から供給された火砕流堆積物である。半島西海岸が火山中心域であったのに対し、半島内陸部,丘島礫岩の分布域は火山末端相が埋積する地域となっていた。 (2)噴出-定置環境を古地理から推定できる後期中新世火山岩相と門前層群の火山岩相を比較した。門前層群の火山活動は、水域と陸域が密着した地域で展開されたとみなされる。浅い水域は火山砕屑岩や溶岩流によって、容易に埋積される状態にあった。潮瀬の岬砂礫岩や台島層の形成期においても、この状態は持続され、西黒沢海進域となった。 2.門前層相当層とされていた秋田県北部内陸域の最下部グリンタフ・目名市沢層は、台島-西黒沢期堆積物の一員であり、他の脊梁域と同様、門前層群相当層は地域のごく一部を除き、発〓しないこと、台島-西黒沢期における火山作用の中心が、西から東へ移動したこと、などが判明した。 3.東北本州弧における後期白亜紀から新第三期の火山中心相の広がりと、墳出-定置環境の変電を検討した。最下部グリンタフ・門前層群相当層(古第三紀〜18Ma)を形成した火山作用は、日本海沿岸〜沿岸山地に限定される。門前層で代表されるこの時期の火山岩相は、内帯西部に浅い水域が各所に存在したことを示している。多島海的環境下に進行した台島-西黒沢期(17〜14Ma)の火山作用は脊梁を越えて、北上山地西部まで広がった。しかし、14Ma以降、西へ再び後退した。
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