研究概要 |
1)VDT走査発光をシミュレートする周期波の背景光と、この背景光上に重ねて呈示されるテスト光を作る2チャンネルのマックスウエル視光学系、および刺激光の波形を任意にコントロールする制御系からなる実験装置を製作した。背景刺激光として矩形波、正弦波等4種を選び、CFF以上、同じ以下の周波数において、種々の位相において増分閾を測定した。3名の被験者において、増分閾値の時間的変化の形状は背景光の周波数が小さい場合は背景光の波形によらず正弦波的なものとなり、背景刺激光のフーリエ第一成分が増分閾の決定に大きく寄与することが示唆された。刺激光の周波数がCFFに近ずくと、増分閾は不規則になり、明確な特性は現れなかった。またCFF以上の周波数でも定常光に対する増分閾値との差が見られ、ちらつきが知覚されない高周波数の刺激に対しても、視覚系内では定常光と異なる応答があることを示唆している。2)色度及び輝度の異なる各々ターゲット及びノイズとよばれる二つの漢字パターンを重ねて短時間呈示した場合の、ターゲット文字の認識率を測定した。装置はほぼ連続的に色度および輝度を調節できるように改良を加えたパーソナルコンピューターを用いた。刺激のサイズは2゜と4゜,呈示時間は約30msと140msの2種を採用し、白色文字と赤黄緑青の四色の文字の分離特性を検討した。3名の被験者において、ターゲットとノイズが等輝度,又は等明るさ付近で、ターゲット刺激の認識率が低下した。また等輝度においては、黄以外は色のついた文字の方が高い認識率を示し、何らかの色の効果が存在することが示唆された。 以上の研究から、周期波に対する網膜での応答は波形にはそれほど依存しないこと、またVDT疲労の一因として、ちらつきを感じない高周波刺激に対する応答が示唆されること、また等輝度等明るさ背景から文字を分離する際には負担がかかること等がわかった。
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