研究概要 |
本年度で得られた知見を研究実施計画にしたがって以下に略記する. 1. ダイヤモンドアンビル球落下測定装置を用い, 合成潤滑油としてBCCM, DMSおよびそれらの混合物の粘度ー圧力ー温度関係を調べたところ, 対数粘度と圧力の間にはほぼ直線関係があるが若干の凹凸がみられた. また混合油粘度推定法の1つであるWright法は本測定値にも適用可能であった. 2. 弾性流体潤滑(EHL)およびトラクションドライブの解析において潤滑油粘度は圧力に対して指数関数的に増大すると近似しているが, 対数粘度と圧力の関係に2次, 3次式を用い, よりばらつぎの少ない回帰が可能であった. 常圧の粘度ー温度関係式として用いられているWaltherの実験式が高圧力下の本測定値においてもよく適用できた. 3. 前年度求めたルビー蛍光線感度の結晶方位による相違を利用して高粘度領域で潤滑油の非静水圧緩和が本実験により観察され, それに粘弾性モデルを適用したところ, ガラス転移点をこえる極めて高い粘度域におけるデータが得られ, この新しい測定法が今後有望であることが示された. 4. 現在最も良い静水圧力媒体はメタノール・エタノール・水の混合液であるが, 本研究では3, の方法を利用すれば, より詳しく非静水圧性を評価できることを見いだした. 5. ブリルアン散乱には潤滑油の粘度・密度情報が含まれており, 本研究ではその測定に必要なファブリ・ペロー干渉分光計を中心とする光学系の設置および光軸調整を行ない, 常圧におけるレイリー散乱の測定に成功した. 6. 以上, ダイヤモンドアンビルを用いた新しい3つの高圧力粘度測定法を提案したが, 落球法についてはほぼ完成した. 実際のトランションドライブにおいてはガラス転移点をこえる高負荷が作用する場合もあり, 3, 5, のような方法が今後必要となる.
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