研究概要 |
機械加工に伴い製品の表層に生じる加工変質層は、製品の耐腐食性や耐摩耗性等の機械的性質だけでなく、電気伝導度や透磁率等の物理的性質にも悪影響を及ぼす。この加工変質層の実体は、残留応力・不純物の混入・クラック・組織変化と多岐にわたっている。そのため、その評価法も測定する対象にあわせて、光学顕微鏡や電子顕微鏡による観察,硬度測定,X線マイクロ回折,電子線回折,オージェ電子分光等と様々な手段がとられており、加工変質層を構成する要因の全てを検出しうる方法は確立していない。 本研究においては、加工変質層においては周囲の組織と音響インピーダンスが異なり、超音波を用いてそれが検出できることに注目し、超音波を集束しその方位分解能を高めた超音波顕微鏡を使用して加工変質層を計測することを試みた。そこで、まず超音波顕微鏡を計測装置として利用することの可能性について従来の研究成果の調査を行い、次にその結果をふまえて超音波顕微鏡を使用した応力計測法について検討を行った。そして、最後に研削加工により生じた熱影響層について変質の度合いの定量化を試みた。その結果 (1)超音波により主応力和が計測されており、また硬さに関連する情報が超音波顕微鏡により観察されていることが、調査の結果判明した。 (2)(1)の結果を受け超音波顕微鏡により応力計測を行ったところ、音響媒体の液体と近い音響インピーダンスを有ししかも材料非線形性を示す高分子材料では、主応力和に対応する画像が計測できることが判明した。 (3)(1)の結果を受けて、超音波顕微鏡により加工変質層をその硬度と関連づけて計測を行ったところ、減衰の小さい材料では弾性表面波の音速により、減衰の大きい材料ではV(z)曲線の減衰を反映した空間反射パワーにより、それぞれ定量評価が可能であることが判明した。
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