研究概要 |
本研究は、ステンレス鋼など鋼の超精密切削加工の可能性を実証し、関連技術の新たな展開を計ることを目的としたもので、フライカッティング方式による超精密工作機械を用いて、CBN工具による超精密微小切削を行い、切りくず生成,仕上げ面特性,切削力,工具の摩耗と損傷などの観点から検討を行った。主な研究成果は以下のとおりである。 1.鋼の超精密微小切削における切りくず生成と仕上げ面特性 研磨したCBN工具を用いてステンレス鋼SUS303Se,炭素鋼CS45C鋼,S25C鋼)の超精密微小切削を行い、切込みが1〜2μm程度においてもほぼ正常な切りくず生成が行われることを確認した。ステンレス鋼の場合、最大仕上げ面あらさが0.1μm以下の鏡面を得ることができた。実験的に得られた仕上げ面あらさは、特に仕上げ面あらさが小さい範囲で理論値より大きくなるが、その差は炭素鋼の場合に大きい。 2.鋼の超精密微小切削における切削力 切削3分力を測定した結果、実験を行った範囲では背分力が最も大きく、ついで主分力,送り分力の順に小さくなることが確認された。主分力に対する背分力の比は1.6〜2程度である。切削力は切削速度にあまり依存しないが、理論切削断面積から求めた見かけ上の比切削抵抗は、送り量の減少とともに極めて大きくなることが求められた。 3.CBN工具と超精密工作機械 CBN含有量を変化させたCBN工具を用いて実験を行った結果、フライカッティングにおいては、工具損傷の面で最適なCBN含有量が存在すること、またバインダの種類も重要であることが明らかとなった。工作機械の主軸剛性は工具寿命に影響を及ぼし、安定して良好な仕上げ面を得る上で重要であることがわかった。
|