研究概要 |
本研究は, ターボ機械の三次元内部流動解析に必要な乱流モデリングの確立に資するため, 遠心力およびコリオリ力が作用する回転翼列内の剥離流の乱流構造を調べることを目的とする. 本研究の主な成果を以下に示す. (1)回転および流線曲率の効果を含む三次元乱流について, 既存の代数方程式モデル, 2方程式モデル, 応力方程式モデルを調査し, モデルによる計算精度やモデルの適用限界について検討した結果, 既存のモデルによりターボ機械の複雑な三次元内部流動を定性的に予測できるものの, 定量的にはいずれのモデルも不十分で, 普遍性の高いモデルを確立するには, 数値解法の発展のみでなく, 詳細な実験資料の蓄積が必要であることが判明した. (2)はく離流の中でターボ機械の性能と最も密接な関係がある回転翼列の伴流および翼先端漏れ流れについて詳細な実験を行い, 次の結果を得た. i)回転する翼面に発達するせん断層は, 遠心力およびコリオリ力の影響を受け, 圧力面側と負圧面側で異った乱流特性を示す. すなわち圧力面側のレイノルズ応力成分の流線方向成分および半径方向成分は負圧面側の各成分より大きく, そのため翼列後方において圧力面側の伴流の方が拡散が速い. ii)回転翼列先端から剥離した流れは翼背面側で巻き上がり漏れ渦を形成する. 漏れ渦は翼負荷が大きいほど, また先端すきま比が大きいほど強く, 翼背面から離れ, ケーシング境界層の排除効果が強くなる. iii)翼先端には漏れ流れ域と通り抜け流れ域があり, その境界に乱れ度の大きい干渉域が存在する. 乱れの度数分布はマクスウェル分布に従う. iv)回転翼列が部分負荷状態になり失速点に近づくと, 漏れ流れは隣接翼に衝突し, 翼間流路を閉そくさせる. この領域の乱れの度数分布は非対称であり, 低エネルギ流れが間欠的に表れる. この現象は回転翼列の旋回失速と密接に関連している.
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