本研究課題の目的は、密閉容器から、過熱液体を急減圧させる際の容器内圧力や温度変動、さらには沸騰開始時の熱力学的条件を実験および理論面から明らかにすることにある。そのため低沸点媒体のR-113液体を用い、容器内圧力・温度変動の測定結果を新たに購入したマイクロコンピュータやその周辺機器の駆使により処理し、種々の知見を得た。また沸騰の様相については、新規購入のカメラにより観察した。 これらの成果の一部は、既に機械学会論文または口頭発表にて公表したが、末発表分の成果も今後遂次、公表する予定である。 本研究で明らかになった成果を要約すると、以下のようにまとめられる。 1).減圧沸騰に伴う容器内圧力・温度変動と沸騰様相について: 減圧後の容器内圧力は、初期圧力隆下と、それに続く液体の爆発的蒸気発生のため、急激な圧力回復を伴う変動を経るが、沸騰の多くは気液界面近傍から液相下部に進行する。これらの沸騰様相と圧力・温度変動パターンは気液や固液の界面的性質によって、大きく3つのパターンに分れる。 2).圧力非平衡緩和過程と沸騰開始条件との関係: 有限体積容器からの液体減圧過程は、圧力の非平衡緩和現象として把握し得るとの立場から、独自の不均一核生成理論を展開した。その結果、新たな減圧緩和時間と沸騰開始条件との間に強い相関があり、本実験のような比較的遅い減圧速度にも充分、適合できることを検証できた。 3).気液両相間の熱力学的非平衡度の因子を導入した数値解析: 1)の実験結果を計算機上で予測するため、新たに気液間の速度差や温度差を考虜した準一次元流れの数値解析モデルを提案し、実験との対比を試みた。その結果、急減圧沸騰時の液体圧力、温度変動の基本的特徴を良く表現し得ることが判明した。
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