研究概要 |
実験に関しては、下壁からの吹き出しを伴う水平矩形ダクト内乱流の流れ方向および高さ方向の2成分の速度をレーザードップラー流速計を用いて同時測定し、特に吹き出し開始点の近傍に見られる流れの層流化傾向について検討した結果、以下のような結論を得た。(1)吹出し面の近傍では、吹き出し開始点の前後でレイノルズせん断応力の絶対値が急激し、それとほぼ対応するように流れ方向乱れ強さと高さ方向乱れ強さの変化が生じる形式の,一時的な流れの層流化傾向が生じる。この層流化傾向は、吹き出しの直接の影響によるものであり、乱れの生成機構および再配分機構双方が変化することにもとずく。(2)吹き出しを行わない上面の近傍では、レイノルズせん断応力の絶対値は下流に向かって漸減し、流れ方向乱れ強さには顕著な変化は生じないものの、レイノルズせん断応力の絶対値の変化とほぼ対応して高さ方向乱れ強さが変化する形式の層流化傾向が生じる。この層流化傾向は、直接的に吹き出しに伴うものではなく、この領域に集中的に生じる流れの加速によるものであり、主として乱れの再配分機構の変化によって生じるものである。これらの結果は昭和62年5月に、日本伝熱シンポジウムにて発表予定である。 いっぽう、数値解析に関しては、昭和60年度中に、吹き出しあるいは吸い込みを伴う円管内乱流にK-ε2方程式乱れモデルを用いる数値計算を応用し、吹き出し開始点から十分下流の領域については、かかる計算法によってその流動、伝熱特性が合理的に予測できること、したがってこの計算法が環状二相流の流動、伝熱特性の推算に応用できることを、第3回アジア流体力学会議において明らかにした。数値計算結果より、吹き出し開始点近傍については定量的な予測が十分ではないことが判明したため、これを改善すべく計算コードを変更した。現在、改良したコードによる予測値と他者の測定値との比較・検討を行いつつある。
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