研究概要 |
アスファルト舗装の表面の車輪走行部分にしばしば発生するわだち掘れは、走行車両が車線を変更する時のハンドルのとられ、降雨時の水はねやハイドロプレーニング現象など、快適性,安全性について大きな問題を引き起す機能的な破壊形態のひとつである。アスファルト舗装にわだち掘れが発生する原因には、積雪寒冷地域でよくみられるようなタイヤチェーン,スパイクタイヤによる摩耗のほかに、交通量が多く比較的温暖な地域にみられるアスファルト混合物の流動現象をあげることができる。本研究は、これらのうち後者の原因によって発生するものに限定し、これを「流動永久変形」と称してその発生メカニズム,発生量などを検討した。 アスファルト舗装の流動永久変形によるわだち掘れ量の予測に関しては、現在まで何人かの研究者によって研究が行われてきたが、その多くは回帰式や補正係数を用いた経験式または準理論式に基づくものであり、一般性に欠けると共に著しく精度が悪いと言わざるを得ない。本研究では、アスファルト混合物の流動の現象を正確に捉えるために、まず計測用のカメラによるステレオ写真を用いて、ホイールトラッキング試験機を用いた車輪走行試験中のアスファルト混合物の表面および内部における流動量を定量化することを試みた。その結果、アスファルト混合物の表面は、車輪の走行部分を中心に沈下をするがその側方では盛り上がりを起こしていること,混合物内部では鉛直方向だけではなく水平方向にもかなりの変形をしていることなどがわかった。また、数値解析の結果、その変形の方向は軸対称問題よりは平面ひずみ問題による弾性解による変形に近いことが明らかになった。 以上から、実際の舗装におけるわだち掘れを解析する場合には、混合物の側方への移動や車軸が通過しない部分での盛り上がりをも考慮にいれる必要性の高いことが結論された。
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