研究概要 |
従来からコンクリートはその優れた耐久性を活用して, 社会・公共・個人の貴重な資産である種々の構造物の主要な材料として慣用されてきた. しかし, 最近になって, 骨材の低品質化, 施行法の分極化, 過度の省力化などが原因となって, 構造物に本来要求されている耐用期間よりもはるかに短い期間ひびわれ損傷が生ずる例が増大している. その一例に従来わが国では皆無とされてきたアルカリ骨材反応によるひびわれ損傷があげられる. この原因としては, 良質の河川産骨材の枯渇に伴い, 種々の岩種の砕石が使用されるようになり, それらの中に反応性骨材が存在していたことがあげられる. 今後におけるコンクリート構造物の耐久性を考えれば, 事前にこの反応性骨材を識別しておくとともに, この問題の防止対策を講じておくことが重要である. 本研究は, 反応性骨材及びコンクリートにおけるアルカリ骨材反応の判定試験法とその評価方法を確立するとともに, アルカリ骨材反応の進行の程度とコンクリートのひびわれ損傷との関係を総合的に検討することによって, この種の反応によるひびわれ損傷の的確な補修・補強方法の確立はもとより, コンクリート構造物の施行技術や維持管理技術の発展に貢献せんとするものである. 昭和62年度においては, コンクリート供試行を対象として反応に影響を及ぼす種々の要因を採り上げ, 影響の程度を検討すると共に, 乾湿の繰返し環境下の膨張挙動とそれの促進試験への適用についても検討した. その結果, コンクリートの膨張とひびわれ, さらには物性の変化との間には密接な関係があり, 膨張量と相対動弾性係数との組合わせによって, コンクリートの劣化の程度が正確に評価でき, また乾湿繰返しによって膨張の発生・進展が促進され, 早期に骨材の反応性とコンクリートのひびわれ損傷の種度が予測可能となることも明らかにした.
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