研究概要 |
貯水池の富栄養化対策のひとつにエアレーション法があり, その水質改善効果の把握とそれに基づく実用化のための技術的方法の確立が課題となっている. 本研究では, エアレーション法における空気泡プルームと周囲水の水理学的挙動の解明と実用化に向けての技術的知見を得ようとするものである. 最終年度の研究成果を示せば, 以下のとおりである. 1.空気泡プルームの実験的研究:昨年度と同様に, ホットフィルム流速計を用いて流速測定を行った. その結果, (1)曝気水深Hで無次元化された流速値の半値半幅b_<1/2>の水深方向分布は, Z/Hの値が0.1と0.8を境界として特性の異なる三領域に概ね区分できること. (2)流れの確立領域における半値半幅の水深方向の変化率は, 発生空気量の1/6乗に比例することが明らかになった. 2.空気泡プルームの理論とそのシミュレーションによる研究:散気式及び間欠式揚水筒から放出される気液混合流体及び周囲水の流れの挙動を現地規模での数値シミュレーションにより解析した. なお, 渦動粘性係数については1.での成果を用いて, プルーム内ではセンターコラムでの鉛直流速成分値とb_<1/2>に比例させ, それ以外の領域では一様に0.01m^2/sとして与えられている. 計算された循環流については, 曝気方式による差は認められなかった. 一方, 初期水温分布(一様水温及び連続水温成層)の違いによる流動状況にはかなりの相違が認められ, 水温成層が発達する貯水池での曝気循環による水質改善効果とその範囲を考える上で極めて重要な基礎資料が得られた. 3.運動学的バリアーとしての空気泡プルームの研究:室生貯水池における曝気実験区を対象として, 空気泡プルームによる流れの場における各種水質変化に関する数値シミュレーションを行った. 再現された水温及び各種水質濃度の時間的, 空間的変化に関する結果は, 実測値より得られる変化の特徴と概ね一致していることが確認された.
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