研究概要 |
梁降状型のR/C骨組では、柱梁接合部からの梁通し筋の滑り出しによって骨組全体の復元力特性の劣化を生じ易いので、これを抑制,改善し、接合部周辺の設計條件を緩和する上で有効な方法を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は、接合部パネルの横補強筋,柱側面の中間主筋,梁接合端部降伏域の横補強筋の梁主筋滑り出しに対する抑制効果に関する実験的検討を行った。試験体は昨年度の実験と対比させて、実大の大凡1/2の寸法の十字型柱梁接合模型(柱成と梁成の比:0.86,柱成と梁主筋径の比:23)とし、接合部パネルの高補強(NZ Code),中補強(ACI Code),低補強(わが国慣行)と梁降伏域の高補強,低補強の組合せの他に、梁通し筋の付着を切ったものである。柱に定軸力を導入し、柱,梁に正負逆対稱曲げ剪断加力を繰返し与えて各種の計測を行った。主な結果は次の通りである。 1.接合部梁通し筋の付着を切った場合には、接合部パネルに亀裂を生ぜず、梁主筋の降伏後大変形に至るまで降伏耐力を概ね保持するが、各サイクルのループは完全に逆S字型となりエネルギ吸収能は非常に低い。 2.接合部パネルの高補強は、梁通し筋の接合部内における付着性能の劣化を抑制し、ループ特性を向上させて優れたエネルギ吸収能を与える。 3.梁接合端部の梁成1.4倍の範囲での横筋の高補強は、梁降伏域の拡大を抑制し、また梁の柱との接合面での剪断ずれを減少させるが、梁主筋の接合部からの滑り出しに対する効果はなく、ループ特性は改善されない。 4.中程度以上の接合部パネルの横補強と梁降伏域の高補強を併用すると、梁の接合端部における剛体回転を抑制する効果がある。 5.柱側面の中間主筋は、接合部パネルに亀裂を生じた後、パネル内で引張応力を負担するが、その値はパネルの横補強が少ないほど大きい傾向がある。
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