研究概要 |
大スパン構造は、スペースフレーム(立体骨組構造)により設計する場合が多く、そのスパンの増大と共に、地震時の上下動入力に対する動的挙動の調査が不可欠となりつつある。しかし、スペースフレームの動的挙動に関する研究は開始されてから日も浅い。なお、種々の動的挙動を検討するためには、理論的研究ばかりでなく、実験的研究も重要であり、本研究では、スペースフレームの動的挙動を振動台実験により調査することにした。 大スパン構造のモデル実験を行うためには、スケール効果を考慮すると共に、固有振動数の領域を実験施設に適するように実験用モデルを設計する必要がある。本実験では、軸剛性を減らすため部材にバネを組み込み、より理想的なピン接合を開発し、このモデルを用いて自由振動実験、正弦波および地震波の上下動成分に対する加速度と変位に関する応答実験を実施した。なお、本モデルは三角形格子をもつスパン2.8m,半開角30゜,ライズ/スパン比0.134の偏平な単層のスペースフレームドームである。 自由振動と正弦波加振の実験結果より、本モデルは25Hzを過ぎる程度から徐々に共振を始めるが、明確にその共振点を示すのは困難である。地震波加振実験の結果の一例として、地震波入力に対する加速度応答倍率は、5.47Hzにピークをもつ最大995galの入力波に対し2.6倍であった。 単層スペースフレームの実地震時の挙動を調べるため、東京大学生産技術研究所千葉実験所内にある塔状形構造物の2階に、直径3mの偏平な単層スペースフレームドームを製作し、現在その観測態勢に入っているが、このモデルの剛性が非常に高いため、現状では有意なデータを得ることができない。観測用モデルの剛性を低くする目的も含め、バネを利用するモデルの開発が必要であったこと、そして、このバネを利用するという試みにより、大きな成果を得たことを追け加えておく。
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