研究概要 |
ホログラフィを用い、板や壁体の音響透過特性を支持状態との関連から明らかにしようとする研究の一部として、今年度は1.撮影したホログラムより、放射音響エネルギーを求める手法の開発並びにその精度的検討、及び2.各種板の遮音機構を解明する際ホログラフィー実験と併用することが有効な、有限要素法による計算力学的な板の遮音特性解析手法の開発を行った。ホログラムより音響エネルギーを推定する手法の概略は以下の通りである。まず、共振状態の板のホログラムを時間平均法により作製する。これより板面上メッシュ点の振動振幅を特性関数から算定し、次に板の支持状態に応じた放射インピーダンスを導出し、この両者より板面外近傍に板振動により生じる音響エネルギーを推定する。この手法を200×300【mm^2】の2種の厚さのアルミニウム板へ適用し、音響インテンシティ実測値と比較したところ、(1,1)(3,1),(2,1)の各モードで、板の周辺部を除き、ほぼ良好な一致がみられた。又、500×800【mm^2】の石膏ボード及び同・石面セメント板に関しても、より広い面積について、同様の結果が得られた。続いて2.に関し、板振動の放射インピーダンスを外挿的に付与し、有限要素法により各種板の透過損失を求める手法を開発した。これにより、390×750【mm^2】の開口部を覆うアクリル板及び2種の厚さのアルミニウム板を対象に透過損失を求め、平板については解析的手法による値並びに実験値と、半円筒型板については実験値と比較し、妥当な近似が得られることを確認した。今年度開発したこれらの手法を用い、次年度は複雑な境界条件を有する板の放射インピーダンスを計算力学的に求める手法の開発を含め、ホログラフィと数値解析の対応を検討し、この両者によって建築物の窓・間仕切壁等の音響透過・遮音特性を、その振動性状,固有振動数並びに振動モードパタン,との関連から明らかにしていく予定である。
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