新規地域における地熱量の評価を行う場合、投資を少なくしできるだけ多くの情報を得ることが必要であり、貯留層の温度やその規模の他に貯留層周辺の地下水の状態や地盤の物理的特性に関する情報も重要な事項となる。その基礎的なデータとして、地熱井のコア試料の高温高圧下での比抵抗測定が考えられる。そのために、先ず測定装置の開発製作に着手し、70気圧250℃の条件まで安定に測定できるシステムを完成させた。測定結果として、高温下における岩石の比抵抗は、飽和流体の比抵抗のみに依存するのではなく、岩石の破壊現象とも密接に関連していること、及び温度変化に対し履歴現象を示すことが明らかになった。これらの結果は、コア試料の測定値から地下温度を推定する際に考慮されるべきである。 一方、地熱貯留層評価のために、度々比抵抗探査が実施される。その結果の解析を自動化するためのプログラムを開発した。ところが、実際の測定結果で、見掛比抵抗曲線が45度以上の角度で上昇する現象が見られるので、そのことを考慮した反復自動解析可能なプログラムに改良した。45度以上の上昇曲線は、基盤面が傾斜していることも一因であることが判明した。このことは、今後掘さく深度を決める際に役立つものと考えられる。 地熱貯留層を論じる時、重要な事は熱水の移動パターンである。このことを調べるために、鬼首地熱地域で実施された自然電位の測定結果を有限要素法を用いて解析した。その結果、温泉地帯での熱水流動パターンの概要が推測できること、当地域の自然電位異常は熱モデルあるいは流動電位モデルだけで測定結果を説明するよりは、両者を考慮した解析が適当であることが判明した。最後に、地熱微動を利用する地熱源探査法については、現在データ解析中である。以上の事から、地熱量評価を行うために物理探査技術を利用するという本研究の目的は達成された。
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