昨年度は高周波表面硬化した鋼の疲労限度と破壊様式に及ぼす硬化深さ、芯部硬さ及び切欠き形状の影響を調べ、この結果を纏めて本年度報告した。今年度は浸炭表面硬化した鋼について同様の実験を行うとともに従来ほとんど研究されていなかった段付き軸についても研究を行った。さらに昨年度から進行中であった寿命予測に関する研究も一応纏めることができた。これら一連の成果は62年度に発表する。得られた結果を下記に要約する。 1.疲労強度特性と破壊様式に及ぼす切欠形状の影響に関する研究 切欠きがゆるやかで内部起点破壊の場合は応力集中係数が大きくなるにつれて疲労限度は上昇し、平滑試験片より強くなる。応力集中係数が約1.5付近で破壊様式は内部起点破壊から表面起点破壊に遷移し始め、疲労限度は最高値を示す。それ以上応力集中係数が大きくなると疲労限度は低下するが、応力集中係数が約3以上では停留き裂が生じ、疲労限度はほぼ一定になる。以上のことから、内部起点破壊から表面起点破壊に遷移する表面硬化条件が最適条件であること及び応力集中係数3換言すると切欠底曲率半径0.5mm以下の場合は疲労限度が同じであることがわかった。 2.段付き軸の疲労強度特性に及ぼす隅部曲率半径の影響に関する研究 この場合は隅部の曲率が小さくなるにつれて(応力集中係数が大きくなるにつれて)疲労限度は低下し、曲率半径が0.01mmの場合でも停留き裂は生じなかった。この理由の研究及び高周波表面硬化材についての研究は62年度に引続いて行う。 3.き裂あるいは欠陥を有する表面硬化材の余寿命推測に関する研究 本年までの実験によって、内部起点破壊型及び表面起点破壊型のそれぞれに対し、応力拡大係数の採用によってかなり高精度の余寿命推定式が得られた。62年度にさらに研究を進める。
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