アルミニウム合金におけるG.P.ゾーンの再溶解つまり復元過程における構造変化を主として軌道放射光を用いた小角散乱法により詳しく研究し以下のような成果を得ることができた。 (1)Al-Zn合金において復元現象は完全復元と部分復元に分けられるが、完全復元時のゾーンの体積分率の減少割合はジョンソンメールの式で記述されること、時間指数は温度に依存して0.5から2.5程度までに変化することが明らかとなった。(2)予備時効を行なった試料をゾーンの固溶限以上で復元すると、ゾーンの溶解過程は2段階に変化する。最初のステージではゾーンのサイズは変化することなく、ゾーン内の溶質組成が減少する。次のステージでゾーンのサイズの減少が起こる。以上の実験結果は後述の理論的考察とよい一致を示した。(3)試料を固溶限以下で復元すると、最初は(2)項で述べたと同様の変化を示し、ある時間を越えると、その温度でのゾーン組成にちかずく。この過程ではゾーンの粗大化が進行することが認められた。 (4)予備時効した試料を室温より一定速度で加熱する過程での構造変化をその場測定により調べた。またDSCにより同一条件で熱分析した結果と併せて考察を行った。比較的低温域ではゾーンの体積分率は一定であるが、積分強度は変化する。これはゾーン組成が変化することに対応しており、比熱変化の傾向ともよく一致した。高温域では拡散が速いため熱平衡的にゾーンの溶解が進行する。 (5)移動界面を考慮した拡散方程式の解析、イジングモデルを用いたモンテカルロ計算により理論的考察を行った。復元過程は非平衡な遷移過程であるが、ゾーンと母相の界面で局所平衡が常に成立すると仮定することにより、本研究で得られた実験事実を説明できることを明らかにした。 (6)復元過程と相補的に相分解過程でのG.P.ゾーンの構造変化をAl-Zn、Al-Ag合金について小角散乱法、アトムプローグ電界イオン顕微鏡法により実験を行った。
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