研究概要 |
1.合金の作製および熱処理; 偏析や内部欠陥の少ない健全な合金を得るためには高純度のMnを用いた方が良く、同時に合金化も容易になる。溶解方法は、アーク溶解および高周波炉あるいはタンマン炉による溶解の併用が望ましい。溶解,熱処理時における雰囲気としては高純度Arガスが適している。また、単結晶はタンマン-ブリッジマン法により溶湯からの緩徐凝固法により作製し、無歪切断機により主軸方向のものを切り出して使用した。 2.構造解析および諸特性の測定; 結晶構造の解析は各種の2元および3元合金について行い、β,γ,εあるいはそれらの混合相を確認した。諸物性はおおむね150〜700K間で測定した。磁性および電気比抵抗の測定からNeel点を決定し、また他に低温における磁化の異常性は存在しないことを確認した。熱膨張測定からNeel点以下でインバー特性を、弾性測定からNeel点付近でエリンバー特性を観測し、磁気測定の結果との対応性を確かめた。また、両特性を共有する合金も見出した。X線解析から求めたaおよびc軸方向の熱膨張は単結晶のそれとほぼ一致し、Mn-Ge系合金の異常熱膨張は大きな磁気体積効果と異方的熱膨張が関与し、弾性率の異常は可逆相変態と大きなΔE効果に起因していることが明らかになった。 3.機械的性質および組織観察; 硬度の測定結果に基づいて、(γ+ε)混合相中最良の加工性を呈する合金系を得、切削,旋削あるいは鍛造試験を行い多くの合金において良好な結果を得た。特にミッシュメタルあるいは軽希上類元素を添加した場合に被削性の改善効果が著しく、光学顕微鏡および走査電子顕微鏡による組織および破面観察によってつぎのことが明らかになった。すなわち、ミッシュメタル等を添加した合金の組織中には細かい針状の析出物が多数見出され、これが粒界をピン止めするためにε相の脆性を防止すると考えられる。
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