研究概要 |
本研究は, 黒潮流軸の小蛇行・前線波動の東進に伴う, 熊野灘と遠州灘の海況変動と漁況変動の実態を明らかにし, かつ, それらの変動の予測モデルを検討しようとしたものである. 研究の成果は以下の3項目から成る. 1.黒潮前線および内側域の海洋構造と変動に関する研究 (1)GEKによる表面流速の既往資料を統計解析することによって, 黒潮の流路パターン別の平均流況と分散を求めた. また, これらを, 沿岸水の流出パターンの衛星画像と比べ, よい対応性のあることを見出した. (2)定期航路船による水温と偏流の観測とステムを確立し, 熊野灘・遠州灘における黒潮系水の流入, 循環の時空間的変動特性が把握できるようになった. (3)熊野灘, 遠州灘の陸棚斜面と, 熊野灘沖の黒潮前線に設置した係留系による流速の長期連続観測から, 卓越する約20日と10日の変動は, 黒潮の小蛇行, 前線波動の車進と結びついたものであることを明らかにした. 2.熊野灘・遠州灘・鹿島灘の漁況・海況の短期変動に関する研究 熊野灘の定置網における水温とブリの総漁獲尾数, および遠州灘沿岸のシラスの漁獲量をスペクトル解析した結果, 高水温時に好漁獲になる傾向が見出された. また, 鹿島灘におけるマイワシと漁場と漁獲量の日々変動の解析から, 黒潮系の暖水舌が差込む時, 暖水舌の沿岸側の前線域に好漁場が形成されることが見出され, これからの前線の変動をモニターし, 予測することの重要性が明確になった. 3.多変量解析による漁獲量の短期変動の予測モデルの作成 遠州灘のシラスの主成分分析と鹿島灘のマイワシの重回帰分析法による漁獲量の予測の試みを行った.
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