研究概要 |
1.融雪・降雨や水田湛水など地表供給水による地すべりの発生機構を明らかにし, その防災対策の指針を得る目的で, 新潟松元山越地すべり地をモデル調査地に選定し, 地下水位, 水圧の自動観測と水質調査, 稲作慣行調査などを行った. 2.1984年に雨を移動した松元山越地すべり地に, 斜面の上, 中, 下腹部の各地点に深さの異なる観測孔(1.5mのストレーナ付), 間隙水圧計を設置して, 無人の長期自動観測システムを開発し, 約5ケ月に及ぶ積雪下のデータもICカードに自動収録することに成功した. 3.この地下水位, 水圧の観測水質調査, 分析から得た主要な点は次の通りである. (1)約6mの表層崩積土内にある不圧地下水位は, 地表近くにありまた年内を通じてほぼ一定である. これに対して下層の地下水は, 地すべり後の排水工施行前の時期は一種の被圧状態にあることが認められた. (2)集水井その他の水抜き工によっては, 上層の不圧水位はほとんど影響をうけなかったのに対し, 下層の地下水は数mの水圧低下をもたらした. この地下水圧の実測値を考慮することによって水抜き工の効果も安定解析にとり込むことが可能であることが示された. (3)水質調査によっても不圧地下水と下層の水との違いが示され, この面からもすべり面粘土が難透水槽を形成しているという地下水モデルの妥当性が確かめられた. 4.地すべり地域の稲作慣行は, 通年湛水が普通であるが一部に乾田化を図る例がある. この違いは, 土壌物理性の地域差や地すべりとの関係よりも用水条件の違いによるものと推察される. 又乾田化による浅い亀裂からの浸透水はすべり面深度の地下水圧に殆んど影響がないことから, 用水改良による地すべり地下水の乾田化が可能である.
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