根菜類遊離土砂は、有機物を多く含み肥効性に富んだ土壌であるが、土壌病原菌類を多く含むことから、病原菌の拡散を防ぐため圃場に還元されずに、未利用地に堆積放置されている。病原菌汚染土壌の殺菌法は、物理的化学的方法が種々試みられているが、いずれもコストト面に難点があって小規模のものしか実用化されていない。一方微生物を利用した発酵消毒法は低コストが期待でき大量処理に適している。本研究は、根菜類遊離土砂のうち、近年特に病害問題の多いビート遊離土を対象として、コンポスト(堆肥)化による発熱で、土壌病原菌を殺菌し圃場に還元する方法を確立するために実施したものである。本研究は主として、ビート遊離土を含むビート糖製糖工場からの排出物によるコンポスト製造条件を求める基礎実験とビート遊離土中の病原菌類の加熱処理による死滅条件を明らかにする基礎実験と、4回にわたる強制通風堆積コンポスト法による実用実験とからなっている。得られた結果は、次のようにまとめられる。1.ビート遊離土、脱水余剰汚泥、CSF(ステフエン廃水濃縮液)、打砕麦稈をそれぞれ重量比で81:13:2:4程度に混合し、水分を約45%、通風量を0.5l/min!kgDM、通風回数を4分通風16分停止で行えば良好な発酵が得られる。2.発酵を開始させるためには、材料温度は少なくとも5℃以上、できれば10℃以上が望ましい。3.土壌病原菌の殺菌は、55℃3週間のコンポスト期間があれば十分である。4.厳寒期においても、前期条件を満たせば強制通風堆積コンポスト法によって、殺菌およびコンポスト製造は可能であるが、温度むら、品質むらができやすい。5.コンポスト処理後の土壌は、PHが高く、発芽抑制が認められるが、後熱過程を経れば、発育効果、発病抑制効果の高い土壌となる。6.強制通風堆積コンポスト法は、麦稈等膨軟機が得られれば、他の農産物残渣処理に応用できる。
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