研究概要 |
リン脂質/界面活性剤混合ミセルからリポソームへの転移現象を詳細に調べ、リポソームの粒子径を制御する因子について考察を加えた。 〔実験方法〕リポソーム構成脂質として卵黄レシチンを、界面活性剤には、c・m・c.の低い界面活性剤としてオクタエチレングリコールモノドデシルエーテル(【C_(12)】【E_8】)を、c.m.c.の高い界面活性剤としてオクチルグルコシドを用いた。界面活性剤の除去方法は透析法および多孔性ビーズに対する吸着によった。形態観察は、フリーズフラクチャーまたはネガライブ染色により作製した試料を透過型電子顕微鏡を用いて行った。流体力学的挙動は粘度測定により調べた。平均粒子径は、ゲルろ過法,準弾性光散乱法,トラップボリュームを併用して決定した。〔結果と考察〕ビーズ法により混合ミセル溶液中の界面活性剤を除去していくと、みかけの粒子径は一時的に増大し、更に除去を継続すると、その後粒子径は低下して一定の値に達した。 この値は用いる界面活性剤に依存し、オクチルグルコシドを用いた時は130nm、【C_(12)】【E_8】を用いた時は800nmであった。濁度が最大を示す時の電子顕微鏡像では、不定形の網状構造が観察された。 この時の粒性挙動はキャッソン降伏値を示し、弱い足場構造の存在が示唆され、電子顕微鏡の観察結果を支持する。粒子径が一定値を示すところでこのリポソームが一枚膜リポソームであることは、封入物質量から計算される粒径が流体力学的半径から計算される値とほぼ一致することと電子顕微鏡から確認された。粒子径に影響を与える因子は複雑であるが、混合ミセルからベジクルへの転移点近傍をどのような方法,どのような速度で通過するかにより粒子径が支配されると考えられる。リポソームの粒子径決定には、構成成分,温度,圧力のような熱力学的パラメーター以外に時間因子を考慮する必要のあることが示唆された。
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