研究概要 |
湖沼のメカニズム研究のなかで, 秋・冬の冷却時に発生する対流の重要性が以前から強調されてきた. しかし, 実際にこの対流を測定しえたのは我々のみであり, 事実の認識が非常に遅れていた. 本研究では従来から使用している垂直用超音波流速計をもちい, 山梨県四尾連湖で総合観測を実施した. 観測においては, 水温・気温・日射・水面上正味放射をも測定し, これらにより総合的な解釈を試みた. 総合観測の結果, 垂直流は強い場合でも2cm/s程度で, 多くの場合1cm/sであった. 狭い湖に共通していることであるが, 四尾連湖では冷却期にもかなりの水温日変化があり, 昼間には表層に成層が発達する. そのため, 垂直流も昼間に弱まり, 夜に発達る. このような対流は, 内部波と考えられる長周期の変動の上に重なる形で生じている. これに加えて, 不規則でかつ大きな乱れが, 特に昼間にみられる. これは移流によるものと解釈され, 移流の原因は湖面の不均一な加熱・冷却である. 本研究では, このように対流・移流・内部波による垂直流の変化を識別した. この識別には0.05°C以下の精度の水温測定が必要である. 冷却時の対流の生長には, 第一に気温・水温差が寄与し, 次に風速が寄与する. したがって, 熱収支との関係において解析することが可能である. なお, 対流セルの規模などについては, 検討中である. 溶存酵素については, これが対流の強さと関係するであろうという予測に合う結果は得られなかった. これはセンサーやスターラーに問題があるように考えられるので, 今後測定法の開発が必要である.
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